[vol.13]全線開通した三陸鉄道リアス線~地域を担う若手人材の育て方~

登壇者の畠山信さん

三陸鉄道が冬に開催する「こたつ列車」

 

今回のメインゲストには、三陸鉄道株式会社から旅客営業部長兼統括駅長の橋上和司さんをお迎えし、地元に根差した企業として地域に対して果たすべき役割や、若い社員とともに描く展望について伺います。他地域からお迎えするのは、特定非営利活動法人北海道エンブリッジの代表理事・浜中裕之さんです。地域企業の新規プロジェクト推進を手がける学生インターンのコーディネートを行うなかで見えてきた、地域企業と若い人材、双方にとっての理想的な在り方をお伺いします。


社内の縦割りではなく、地域との繋がりを仕事にする

――三陸鉄道での橋上さんのお仕事や、現状を教えていただけますか。

 

橋上和司さん(以下、橋上):三陸鉄道は開業してから36年になるのですが、私は第一期生として三陸鉄道とともに過ごしてきました。運転手や車掌、駅員や指令を経て、今は何でも屋みたいな恰好になっています。


メインゲストとしてお話いただく、三陸鉄道の橋上和司さん

私が所属しているのは旅客営業部なのですが、三陸鉄道は実は部署があまり関係ありません。長い間、地域の皆さんと関わりがあるので、地域の人と繋がっている者が窓口になって事業を起こしていくスタイルです。「私は運転だから」「私は土木だから」と、会社や仕事に縛られるのではなく、「野田村に住んでいる誰々だったら、誰々を知っているはずだ」とか「釜石に住んでいるのだったら、彼を繋ぎ役にしてこういうことができる」という枠を超えることができる会社なので、あまり社内の縦割りにこだわることはなく、地元の人たちとの繋がりも活かして仕事をしています。

 

社員は岩手県南部の者が多いので、社員である前に住民であって、被災者でもあります。東日本大震災以降、「いかに地域の皆さんに三陸鉄道が必要であって、そのなかで生かされているか」ということを社員に伝えながら、会社を立て直すために全員でがんばってきたところに、昨年は令和元年台風第19号の被害がありました。今年は、三陸鉄道リアス線としてすべての線路が繋がったのが3月23日だったのですが、ちょうど新型コロナウイルス感染症による自粛でイベントがなくなりました。

 

震災以降、人口の流出が止まらないところに、現在のコロナの状況です。最近は海水温の影響で魚が獲れないこともあって、沿岸部は元気がありません。私たちが元気を届けられるようにがんばっているところです。


三陸の名産である牡蠣をいただける「花見かき列車」

――現在、人材面での課題はありますか?

 

橋上:第三セクターである鉄道は全国的に人材の確保に困っている一方で、新しい流れもあります。鉄道が大好きな人がローカルの鉄道に入社しているケースが見受けられるのです。一度別の場所で就職し、「自分は鉄道が好きだったから」と入ってくる社会人もたくさんいます。

 

三陸鉄道としては、UターンでもIターンでも来てもらえるように、「おもしろそうなことをやっているな」と思ってもらえるような発信を続けたいと思っています。


地元で働くという選択肢を増やすために

特定非営利活動法人北海道エンブリッジの浜中裕之さん

――エンブリッジの活動内容を教えていただけますか。

 

浜中裕之さん(以下、浜中):エンブリッジの浜中です。大学2年生の時から、地域の中小企業をひたすら回る活動をしていました。最初は僕も「働かせてください」と言っていたのですが、次第に大学生をコーディネートするようになって、いろいろな会社に若者を送り込むようになりました。学生たちが「札幌っておもしろいんだ」「自分で仕事を作るって意外とできるんだな」と意識が変わっていき、企業も「こういうことを若者とチャレンジしたい」と変化する姿を見て、これを自分の仕事にしたいなと思いました。

 

大学4年生の時にNPOを作って、在学中も含めると15年くらい、地域と若者を繋ぐ活動をしています。今、僕らが手がけている事業は長期のインターンシップと、「自分で会社を作ってみたい」という子たちに向けた創業支援プログラムです。それに加え、北海道全体に活動を広げていくチャレンジをしています。

 

インターンシップは大企業からベンチャー、農業、林業などさまざまな分野に若者を送り出しています。新しいプロジェクトを作って、半年ほどの期間をかけて、学生も会社も悩みながらチャレンジするようなプログラムです。

 

例えば、地域で捨てられている農産物でアイスクリームを作ったり、旅行会社と組んで地域を回るツアーを作ったり。新しい価値を作ることを大切にしながら、それを学生に任せて一緒に作っていこうというものです。

 

そういうことをやっていると、インターンを終えた子たちから「自分のフィールドでやりたい」という声が多くなってきたので、ディスカッションを重ねながら、それを作るのをサポートしています。「(何かを生み出したいという学生や若者は)地域にいるのかな?」と思っていたのですが、旗を立ててみると、実はやりたい思いを抱えている子たちがいることがわかりました。

 


やりたいことを叶えるためにディスカッションを行う

今年からは、そういった取り組みを北海道各地に広げていこうとしています。北海道は広く、その土地ごとに地域資源や学生の気質は違うので、それぞれの地域で取り組めるようなプロジェクトを作っています。志と誇りを持って楽しみながら働ける社会を、どうやって作っていけるだろうかとチャレンジしているところです。

 

――北海道全域に広げているのですね。

 

浜中:現状、北海道では札幌に人口が集中して、さらにそこから東京にも人を送り込んでいます。東京に出ていくことは悪いことではないけれど、逆流する選択肢も作っていくことが大事だなと。最近の学生たちと話していると、「場所はどこでもいいんです」と言っている子が多いので、可能性はすごくあるなと思っています。


インターンシップは絶対に断らない

 ――三陸鉄道でもインターンシップの受け入れはしていますか?

 

橋上:中学生から大学生まで、インターンシップの受け入れをしています。現在働いている運転手のなかには、中学校で社会科見学をして入ってくれた子が何人かいるんですよ。

 

そういった機会は、貴重な場だと思っています。お問い合わせをいただいたら、100パーセント受けるというスタンスです。絶対に断りません。特に高校生のインターンシップに力を入れていて、会社を知ってもらった上で、入社したら長く働いてもらいたいと思っています。

 

――若い年代の社員はどれくらいいるのですか?

 

橋上:年齢構成はあまりよくなくて…。昭和59年に国鉄から引き継ぎを受けた時に一気に人材が欲しかったので、その年代が非常に多いです。そのあとはずっと採用がなかったのですが、今は30代以下が増えて、120人の社員の内の30人ほどです。なので、30代以下と、40代半ばから60歳くらいまでと両極端に分かれています。

 

我々の年代がまもなく退職に近づいていますので、若い人に入ってきてもらえるようにアプローチをしているのが現状です。

 

――こんな人に三陸鉄道に携わってもらえるといいなというのはありますか?

 

橋上:お祭り好きが来てくれるといいですね。「地元のお祭りにずっと関わっている」とか、「俺に神輿を担がせたら最高だ」というような人が来てくれると…。

 

三陸鉄道沿いはリアス海岸で交通が不便だったゆえに、各地に貴重なお祭りが残っています。そういったものが観光の呼び水になるのではないかと思っています。古くから伝わる郷土芸能やお祭りを鉄道員が発信するのもおもしろいですよね。大きな祭りではないものをご紹介するほうが、三陸鉄道らしいのかなと。地域の担い手もそれで頑張れるようになったら、ちょっとでも人口の流出が止まるのではという思いもありますね。

 

――お二人は、若者とともに活動する上で気にかけていることはありますか?

 

浜中:本当に会社がやりたいことでプロジェクトを作ることが大事だなと。学生のためにプロジェクトを作るのではなく、会社の未来に繋がるものをやるといいですよね。

 

橋上:学生に対して見せるものと本業を別にすると、会社は常に変化するので、若い子が思っていたのと違うとなることが多々あります。若い人たちとの最初の出会いで、あまり飾らずに「こんなことをやりたいんだ」と伝えて、変化しながら一緒にそこに向かえたらいいでしょうね。

 

オンラインイベントは、12月3日(木)19:00から開催です。皆様のご参加をお待ちしております。


テキスト:泉友果子