[vol.14]東北から未来の可能性を拡げる3つのプロジェクト

〜語り部バス・持続可能なまちづくり・地方での大学生の活躍〜

本イベントでは東北で活躍する3名を迎えて、それぞれがプロジェクトを前進させるために投げかけた「問い」を、参加者の皆さんとともに考えます。活動内容や、「問い」を立てた背景を伺いました。

 

■テーマ1

震災を風化させないための語り部バスが次の10年も走り続けるために必要なことは?

登壇者:伊藤 俊さん

(株式会社阿部長商店 南三陸ホテル観洋 第一営業次長 企画課長兼務/防災士)


――自己紹介をお願いします。

 

伊藤俊と申します。宮城県にある株式会社 阿部長商店 南三陸ホテル観洋で営業次長として仕事をし、企画も担当しています。今は防災士としても活動しておりまして、災害のことを勉強しながら、伝える活動も積極的に行っております。

 

――南三陸ホテル観洋で行っている、「語り部バス」について教えてください。

 

東日本大震災が発生してホテル自体も大変な状況に追い込まれましたが、皆様に応援いただいて、今は普通に仕事もできております。当時は災害で何もかもを失い、町の風景も変わりました。震災について伝えるだけでなく、地域のことも改めてお伝えしたいなというのがきっかけで、2011年夏に案内を始めました。当初はこの町にボランティアでいらした方や、視察に来られた方の案内役として活動していたのですが、翌年にはホテルにあったバスを使って「語り部バス」として案内を始めました。それから8年ずっとやってきた取組で、今も毎朝ご案内しています。

 

当初はまだまだ悲惨な風景も残っていましたし、私たちもまだ被災から立ち直っていない状況から始まりましたが、「語り部バス」を始めたことで継続して全国の方に足を運んでいただけるきっかけにはなっているのかなと思います。人口減少が進んでいる地域でもありますので、現地に足を運んでくださる方がいるというのは、地域にとっても大きな力になります。

 

――伊藤さんが投げかけた「問い」について教えてください。

 

来年で震災から10年です。私たちはあまり節目とは感じていないのですが、世の中としてはひとつの区切りとも捉えると思います。10年が経って私たちが普通を取り戻したかというと決してそうではないですし、「語り部バス」としてこの先も伝えていきたいという気持ちがあります。そのために、「10年目からをどう頑張ったらいいのだろう」というのが、大きな課題です。東日本大震災以外の災害にもいえると思いますが、伝える人は高齢化していますし、なかなか次世代に繋げられていないということも感じています。

 

同時に、改めて「語り部バス」が次の10年で「どんな目的をもつのがよいのか」「どんな方に乗ってほしいのか」「バスの中で何を伝えたらいいのか」というのを、自分たちの中でも整理しなくてはいけないという思いがあります。私たちが前に進んでいくために、皆さんがどう感じるかという声を聞けるというのは、私にとっても貴重な場だと思っています。

 

――伝え続けることは、なぜ大事だと考えますか?

 

私たちは当時、たくさんの人を亡くしてつらい思いをしました。時間が経てば経つほど、風化どころか、人によっては災害そのものが存在しなくなるという怖さを感じます。けれども、震災のなかで培われた教訓もあります。伝えなければ、同じことが起きた時に繰り返してしまうかもしれません。震災をなかったことにしないために、震災にどう向き合って、どう伝えていくかというのは大事です。

 

これまでの10年も大事でしたが、これからの10年ももっと大事になるのでないかなと。皆さんには10年応援していただきましたが、今まで現地に足を運んだことがない方にも伝えていきたいです。多くの方に行ってみようかなと思っていただければ、もっともっと前に進む力になるのではないかなと思っています。

 

――「問い」をどんな人と考えたいですか?

 

「語り部バス」は年齢や性別はもちろん、専門分野も問わず乗っていただきたいと思っていますが、今回の課題に関しては次世代の方ですかね。修学旅行で学生の皆さんにお伝えする機会は増えてきましたが、特に大学生や20代の方にお伝えするのはなかなかできていないので、そういった若い方々とぜひお話したいです。また、子どもたちに問いかけを作っていただけるという意味では、学校の先生にもご参加いただければ。

 

これからも「語り部バス」に興味を持っていただくために、自分たちの考え方だけではなくて、皆さんの声を聞く機会にしたいです。

 

 

■テーマ2

地域の資源を活かした持続可能なまちづくりはどのように生まれ、活かされていくべきか?

登壇者:水口 拓未氏(特定非営利活動法人SET 事務局スタッフ)


――自己紹介をお願いします。

 

水口拓未と申します。今年大学を卒業しました。大学2年生の時に特定非営利活動法人SETが主催する「Change Maker Study Program」に参加して、それを機にSETの会員として活動を始めました。月に1回、岩手県陸前高田市広田町に通いながら過ごしていましたが、「もっと広田町でできることがあるんじゃないか」「この町のために何かしたいな」と思ったので、広田町に移住してきました。

 

現在は新型コロナウイルス感染症の影響でプログラムが中止になったこともあって、オンラインの取組に携わったり、経理や総務などを改めて見直したりしています。

 

――水口さんが投げかけた「問い」について教えてください。

 

「地域資源を活かした持続可能なまちづくりはどのようにできるのか」という「問い」です。今私たちが主に拠点として活動している広田町は、小さな漁師町です。僕が来た3年ほど前の人口は3400人くらいでしたが、今年3000人を切りました。若者が東京や地方都市に出ていくことで、担い手不足や文化の継承に課題を感じている方もいます。ここを残していきたいと考えている住人と、僕らのように関わっていく人を交えて活動していくことが必要です。

 

僕たちが取り組んでいるところとして、地元の漁師さんから魚を、産直から野菜を買い取って、地元の住民に届けるというサービスを行っています。これによって、今まで売れなかった分が売れて、まとまった収益が入ってくるようになったという声がありました。それだけでなく、消費者の声を直接もらえることで励みになっているという面もあります。

 

このような地域の資源を活かした取組を増やしていきたいと思っています。今後も持続可能なまちづくりをするためにどういうことができるだろうと話していけたらいいなと思っています。

 

――「問い」をどんな人と考えたいですか?

 

地方創生や、持続可能な広げ方に興味がある方たちとお話できればと思います。また、実際にまちづくりに携わっている方たちと話して、お互いの地域に還元できたらいいですね。

 

――水口さん自身は、なぜ広田に住もうと考えたのですか?

 

大げさな言い方かもしれないけれども、「社会や町といった大きなシステムに一石を投じられたらな」という思いで活動を始めました。でも社会全体って大きくて、そのなかの「町」という単位だったら何かできることがあるかもしれないと思ったのと、何かをした時に直接フィードバックをもらえることが、移住の原動力になりました。時には怒られることもありますが、目の前に人がいることで届けられているという感覚を持てることで活動を続けています。

 

 

■テーマ3

大学生が地方で活躍するためには?

登壇者:石渡 博之氏(特定非営利活動法人SET Change Maker Program事業部長)


――自己紹介をお願いします。

 

石渡博之と申します。平成7年生まれの神奈川育ちで、東京の大学に通っていました。大学1年生の時に、今私が所属しているSETの「Change Maker Study Program」という、現地に1週間滞在して、町の人と一緒にまちづくりをしようという大学生向けのプログラムに参加しました。以降、SETのメンバーとして広田町に通い、大学卒業と同時に広田町に移住して、今は「Change Maker Study Program」の運営をメインでしております。

 

――「Change Maker Study Program」について教えてください。

 

大学生が住民の方との交流を通して、「町のためになることって何だろう」と1週間かけて考えて、実際にアクションを実施するところまでを手がけるプログラムです。どたばたの1週間ではあるのですが、参加者はそのあとも運営スタッフとして関わるのもいいですし、広田町には通わないけれども学んだことを大学で活かしていきたいと考える学生もいます。学生と町の方の双方に気づきがあり、広田町のためになる行動に繋がるようなプログラムにしたいと思って運営しています。

 

現在、プログラムは7年目になります。大学生は合わせて700名くらい参加していて、このなかから私自身も含めて2030人の移住者が生まれました。

 

 

――石渡さんが投げかけた「問い」について教えてください。

 

新型コロナウイルス感染症の影響での新たなライフスタイルとして、大学生がオンラインで授業を受けることで場所にとらわれず、地方で学びながら人と交流ができることは素晴らしいなと考えています。

 

もちろんコロナが収束することを願っていますが、収束後にまた大学に通うことになっても、大学生が引き続き地方と繋がったり、地域のために何かができるような大学生のライフスタイルに関して、アイデアを出し合ったり、みなさんがどう捉えているのかをディスカッションできればと考えています。

 

――地域にとって大学生はどういう存在だと思いますか?

 

労働力というよりは、地域を盛り上げたり、地域の人と人を繋いだりする役割なのではないでしょうか。人口が減っても、町で活動する人や、町への愛着を持つ人が増えて、「魚がめっちゃ美味しいです!」と伝えるだけでも価値があるなと思っています。

 

――「問い」をどんな人と考えたいですか?

 

学生自身はもちろん、大学教育に携わっている方ともお話したいです。大学生は次のステップは就職になると思うのですが、その当たり前に追従せずに「こうできたらいいな」と思っている方と繋がって、ディスカッションできたら面白いなと思っています。

 

また、地方で何かをされていて若い方と繋がりたいという方とディスカッションしてアイデアを膨らませられたらうれしいです。オンラインだからこそ、他地域の方とお話できるのを楽しみにしています。

 

 

 

伊藤さん、水口さん、石渡さんがご登壇するオンラインイベントは、12月8日(火)19:00から開催です。皆様のご参加をお待ちしております。


テキスト:泉友果子