[vol.8]災害の復興から生まれるコミュニティデザインとは

〜住民主体の『みんなの居場所』づくり・住み慣れた地域で暮らすには〜

本イベントのメインゲストとしてお迎えするのは、宮城県仙台市のあすと長町で活動する「認定NPO法人つながりデザインセンター」で副代表理事を務める新井信幸さんと、事務局長・理事を務める宮本愛さんです。東日本大震災後、仮設住宅を経て災害公営住宅に移行するなかで、新しいコミュニティづくりを行ってきました。他地域からは、2018年に豪雨水害の被害を受けた岡山県倉敷市の真備地区で「小規模多機能ホームぶどうの家真備」を運営する代表・津田由起子さんを迎え、両団体の取組を通して災害とコミュニティについて考えます。イベントの開催にあたって、それぞれの活動内容についてお伺いしました。


登壇者の畠山信さん

あすと長町仮設住宅でのコミュニティ

仮設住宅で培ったつながりを維持するために

ーー団体を立ち上げたきっかけを教えてください。

 

新井信幸さん(以下、新井):「認定NPO法人つながりデザインセンター」は、宮城県仙台市で2016年秋に設立した団体です。私は東北工業大学建築学科で教員をやっていまして、もともとの拠点である東京にいた頃から、団地の再生やコミュニティづくりに取り組んできました。

 

震災後は仮設住宅から公営住宅に移るステップでの「コミュニティづくり」が課題になります。高齢者から「公営住宅に移ったけれど、仮設住宅のほうが楽しかった」という声が聞かれることも。仮設住宅の集会所には毎日のように外部の団体がやってきて、いろいろなイベントを開催しています。そこに行けば孤立せずに楽しく過ごせるという経験をされていても、公営住宅になるとそれが途切れがちになるのです。

 

公営住宅ができたあとも今後の居場所づくりをしていこうと、仮設住宅で活動していた団体に声をかけて、「つながりデザインセンター」を立ち上げました。


認定NPO法人つながりデザインセンター 新井信幸さん

※2018年に「震災復興支援/コミュニティ・デザイン」でグッドデザイン賞を受賞


コミュニティには多様性が大事

ーー今はどのような活動をしているのですか?

 

新井:仙台市内のあすと長町という都市部で活動していたのですが、そこがうまく機能したので、周辺のコミュニティづくりもサポートしています。

 

震災後、最初のうちはみんなコミュニティづくりをがんばっていました。しかし震災から9年半が経ち、高齢化していることもあって停滞しており、がんばってきた人たちは疲弊しています。そのため、「持続可能な地域の運営」をテーマに、自治会というかつての取組よりもスリムな方法、あるいはNPOや任意のサークルが連携して活躍できるような地域の運営の仕方について指導したり、実践してみせたりしています。

 

地域を運営していくのに大事なのが、集会所の運営です。集会所がみんなの居場所になるような運営の仕方をしなくてはいけないと思っています。


あすと長町の公営住宅の集会所では「あすと食堂」を月に1~2回、開いている

 

そのための条件のひとつは多様性。自治会や町内会の人たちががんばって毎週お茶会をやっても、固定客化してつながりが広がらないという話もあります。コミュニティや繋がりは多様な形でつくっていくことが大事で、そのためには多様な団体や顔ぶれが集会所を使うことが必要だということを伝えながら、集会所の運営についてアドバイスしています。

 

外部の団体の利用を促進するために、パンフレットの制作も行っています。うまくいっている集会所ではほぼ毎日のように、高齢者のための活動や子どもたちの学習サークルが開催されています。復興支援ということだけじゃなくて、地域に貢献する活動がしたいという人たちにどんどん使ってもらおうとしています。活動を通じて居場所づくりを進めることで、孤立しない地域社会を実現したいと考えています。


安心安全のための繋がりとは

ーー続いて、「小規模多機能ホームぶどうの家真備」の活動について教えていただけますか?

 

津田由起子さん(以下、津田):岡山県倉敷市の真備は、2年前に被災しました。事業所も被災して、4カ月間は利用者さんたちと地域の方たちと公民館で過ごしました。そのあとは行き場がなかったのですが、支援団体の方たちが倉庫を改修してくださって、そこでさらに4カ月を過ごしました。


小規模多機能ホーム

ぶどうの家真備 津田由起子さん

小規模多機能ホーム

ぶどうの家真備の地域交流室


そのなかで、どうしたら真備が安心安全な町になるかなと。何度も水害に遭っている町なので、1階には住まずに、2階、3階に住めるような建物を建てたいという話になりました。それが「サツキPROJECT」の始まりです。

 

ただ建物だけあっても、安心安全とは言えません。なぜなら4階建ての建物の1階で亡くなってしまった例もあり、やはり人と人のつながりもないと駄目だと感じたからです。一方で、ずけずけと他の人の暮らしに踏み込んでいくのではなく、ある程度の距離があるような暮らしを望んでいるという話もプロジェクト内から出ました。建物も大切ですし、地域での住まい方・地域の人との繋がり方も大事だというのが、「サツキPROJECT」の肝になります。

 

地域の方がプロジェクトの話を聞いて、水害に遭ったアパートを使えないかと話を持ってきてくださったことで、今プロジェクトを展開できています。(予算の関係で)住居は2階だけでなく1、2階にして、コミュニティルームを2階の一部に作りました。6月にオープンしたのですが、2部屋以外は埋まりました。これからどういう新しい生活が始められるかな、というところです。


「サツキPROJECT」で建てたアパート。

車いすで移動される方や階段移動の負担が大きいお年寄りも2階に上がれるように、スロープを設置

このコミュニティルームに先日も町の方が避難していらっしゃいましたので、安心できる場所ができたのかなと思います。

 

ーーその時の避難はどんな様子でしたか?

 

津田:アパートの2階に住んでいる方が、1階に住んでいる方に「そろそろ上がったほうがいい」と声をかけたり、近所の方も迎えにいってくれたりしました。コミュニティルームで過ごしたので、いつもの集会のようで。避難が重荷でなく日常生活の延長という雰囲気だったのは、すごくよかったかなと思います。コミュニティルームは、届出避難所として登録したいと計画しています。

 

新井:「繋がりはゆるやかに」という話に共感しました。プライバシーは大事だし、価値観もそれぞれ違うので、繋がりってそんなに密じゃなくていいと僕らも思っています。コミュニティというと地域が一体化することを目的にすることもあると思うのですが、小さなグループがたくさんあって、それがゆるやかに繋がっていると孤立しないですむのかなと考えています。

 

オンラインイベントは、9月24日(木)19:00から開催です。皆様のご参加をお待ちしております。


テキスト:泉友果子