[vol.11] カレーを通じて、人も地域も幸せに〜にしき食品が創造する「レトルト食品の新しい価値」

~ レトルト食品が生活に彩りを与える?~

 レトルト食品は「時間がないときのお助けアイテム」のような位置づけとして、食べるときに商品の生産過程に目を向けることはそう多くないかもしれません。しかし、宮城県岩沼市に社員の労働環境を第一に整え、お客さまである生活者と真摯に向き合うレトルト食品の会社があります。株式会社にしき食品の齋藤幸治さんをお迎えし、レトルト食品の新しい価値について考えました。


~ レトルト食品の新しい価値とは ~

 インプットトークでは、岩沼市にある「にしき食品」の齋藤幸治さんが登壇しました。にしき食品は1939年に佃煮をつくる会社として創業し、1975年にレトルト食品の事業を開始しました。しばらくは業務用レトルト食品のみをつくっていましたが、2000年頃から「業務用だけでよいのか」という声が社内で挙がります。なぜなら、業務用であれば大口の取引にはなりますが、価格競争にさらされて利益が出づらいからです。生産量を増やさないと利益が増えないという状況は、夜勤をしないと決めているにしき食品にとって難しい問題でした。

 

 「にしき食品の理想は、安い商品を大量につくるのではなく高品質で価格の高いものをつくることだ」と市販品に舵を切り、OEM(他社ブランドの製品をつくること)に注力して成功します。その矢先に起きたのが震災でした。幸い従業員や家族に人命被害はなかったものの、工場1階部分が浸水するなど、稼働停止を余儀なくされました。社員の生活を考えて45日で生産を再開し、翌年には新しい工場を新設しました。

 

 その後はOEMだけでなく、消費者との距離を縮めるために自社ブランド「にしきや」を立ち上げます。「にしきや」のレトルト商品は化学調味料や色料、香料を使わず、素材の風味をいかしてつくっています。また、キッチンやリビングで見せてストックできるようにパッケージデザインに力を入れていることも特徴です。商品を知ってもらうための取り組みとして力を入れているのは工場の駐車場で行う「にしきや感謝祭」で、今年は1200人が参加。継続して続けていることでファンが増えています。

 


 インプットトークのあと、参加者は実際にレトルトカレーとスープを試食し、ワークショップへの具体的なアイデアに繋がった様子でした。

 

にしき食品>>

 

 


カレーは左下から「レモンクリームチキンカレー」「ケララフィッシュ」「野菜ゴロゴロカレー」。上段は冷製スープで、エンドウ豆を使った「サンジェルマン」と「ガスパチョ」。


~ レトルト食品、どんな場面にあったら嬉しい?~

 


 アイデアワークでは、「レトルト食品のイメージを変える、新しい価値を考える」と題して、「日常のどういう場面にレトルト食品があると買いたくなる?」「コミュニケーションツールとしてのレトルト食品の可能性を探る」というテーマに対してグループごとに話し合いました。オフィスという場所や仕事をしている人を対象にしたアイデアが多く、「オフィスで食べやすいように匂いが少ないカレーをつくる」「社内のランチ会で食べる」「仕事帰りに自販機で気軽に買えるようにする」「会社のイベントでオリジナルカレーをつくる」「会社で売り、ごはんだけ自分で持参する」といったアイデアが発表されました。そのほか、「『あなたの家のカレーをレトルトにします』という企画をする」「ライスやナンをセットで売る」「レトルトカレーのサブスクリプションをする」などの案も。

 

 登壇者の齋藤さんは多くのアイデアが出てきたことに驚きながら、特にオフィスでのレトルト食品の利用やコミュニケーションツールとしてのレトルト食品に特に興味を示しました。

 

 今回の参加者は、にしきやの化学調味料不使用のレトルト食品を食べ、さまざまな活用アイデアを話し合うことで、レトルト食品へのイメージが変わった人が多いのではないでしょうか。普段の生活に取り入れるだけでなく、コミュニケーションを活発化したり、防災食・介護食として考えたり、レトルト食品の可能性が感じられるイベントとなりました。

 



テキスト:泉友果子