[vol.12] 福島県浪江町で目指す1億円ソーシャルビジネス ~多様な働き手(高齢者・支援が必要な住民・若者)が参画する花づくり~

~ 浪江町に新たな産業をつくれるか~

 福島県浪江町は、福島第一原子力発電所から最も近いところで4キロという距離の場所にあり、震災で2万1,000人以上の人が避難を与儀なくされました。平成29年には帰宅困難地域を除いて避難指示が解除され、現在町内に居住しているのは約1,100人。「戻ってきた高齢者が豊かに生き、若い人に来てもらう仕組み」を念頭に、浪江町で1億円産業を生み出そうと活動するのがNPO法人Jinの川村博さんです。

 

「NPO法人Jin」復興のパイオニア ~浪江を日本一の花の町へ~ >>

(20171010_h-kawamura.pdf 968kb)

 

 


~ ソーシャルビジネスとしての花産業 ~

 インプットトークに登壇した川村さんは、震災から2年経ち、一時立ち入りで地域に入れるようになったのを機に、荒れ果てた地を整えるために農業を始めました。最初は野菜をつくったものの、収穫した野菜からは高い放射性セシウムが検出され出荷を断念。代わりにトルコギキョウをはじめとした花の生産に変えました。

 

 「戻ってきた高齢者が豊かに生き、若い人に来てもらう仕組み」を念頭に置き、障がい者も雇用して花を生産しています。当初規模の生産量により地元での売り上げのみで生活することもできなくはありませんが、若い人がこれから結婚や出産を考えて生きていくためにはさらなる稼ぎが必要で、そのために東京に出荷するという方法をとりました。

 

 認知度が上がり、高級な花として取引されるようになり、現在はラグビーワールドカップの釜石市の会場でも見ることができます。関東の大学生がボランティアに来たのを皮切りに、現在も若い人の研修を受け入れています。なかには町内で花農家として独立予定の人もおり、「花産業を浪江町で1億円産業にするのはそう遠くないことなのでは」と語りました。

 


~ 浪江町に訪れてもらうためには ~

 


 テーブルダイアログでは、「浪江町の花×土地を活かした観光地づくりについて」と題して、観光地として訪れてもらうアイディアをグループごとに話し合いました。あるグループは「共育」をキャッチフレーズに、何回も来たくなる浪江町になるための施策を発表。一緒に浪江町を育て、自分たちも育っていくことで浪江町に責任を持つようになれば、定期的に訪れるのではという思いで「共育」という言葉を使い、花のオーナー制度としてビニールハウスをシェアし、育てた花を大切な人に贈ったり、子どもたちが自然を体験できるように学校ごとにひとつのビニールハウスを担当したりするなどを提案しました。他には、「フラワーロードに結婚式場をつくり、そこで挙式した人が毎年来たくなる」「他の地域にないものを推していく。自分で花を摘んで花束をつくるなど」「花の栽培に携われば、1年に何度も行きたくなる」といったアイディアも挙がりました。

 

 最後に登壇者の川村氏が発表に対してコメントをし、「『参加型』『観光×学び』というアイディアが多かった。言ったことは『形』にしなければやったことにならないので、『形』にしていきたい。プロジェクトが大きくなると1人でできなくなることもあるので、協力できる方がいらっしゃればぜひ手伝っていただきたい」と参加者に話し、幕を閉じました。


テキスト:泉友果子