[vol.15] 釜石防災モデルを未来へ語り継ぎ届ける - 防災教育を通じた新たなツーリズムづくり・地域づくり-

~ 未来の誰かの命を救うために~

 2019年の秋は台風による大きな被害が発生し、日本のどこでも被災地となる可能性があること、そして誰もが防災意識を持つ必要があることを改めて浮き彫りにしました。多くの人に防災意識・防災知識を持ってもらうために何ができるのか、岩手県釜石市で防災教育に携わる伊藤聡さんとともに考えました


~「災害が起きることは防げないんです」~

 インプットトークでは、一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の伊藤さんが登壇。岩手県釜石市で生まれ育った伊藤さんは震災後にボランティアのコーディネートを始め、2012年には三陸ひとつなぎ自然学校を立ち上げました。「子どもたちの地域教育」「観光地域づくり」「防災教育」を柱に活動し、「災害が起きることは防げない。その分、復興活動に関わる人材をつくっておくことが必要。未来の命を助けたいという思いでやっている」と話します。

 

 伊藤さんは震災当日、目の前が海である旅館(宝来館)で働いており、自身の目の前で4人が津波にのまれるところを見ました。幸い命は取り留めましたが、その内3人は寒さで衰弱していきます。「津波から身を守るために旅館の裏の山で過ごすのか。それとも体が濡れて寒さに凍える3人と一緒に宝来館に戻り1晩を過ごすのか」という選択を迫られたときのことを語り、「皆さんだったらどうしますか?」と参加者に問いかけました。

 

 結果的に伊藤さんたちも3人も助かります。その1晩のことを実際に現地で案内しながら話し、参加者に追体験をしてもらうプログラムを行っています。「最初は復興・復旧に向けて取り組んでいたが、震災から3~4年経つと元に戻すのではなく新しくつくっていこうという意識になった。これから先も続くことだから、地元の子どもたち、若い人々が一緒に地域をつくってもらえるような取り組みを行っている」と話しました。

 

一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校>>

 


 テーブルダイアログでは、「防災教育のこれからを考える」と題し、防災教育をより多くの人たちに体験してもらう方法、そして防災を学ぶために釜石市に来てもらうにはどうしたらよいかを話し合いました。あるグループは、東京から釜石市までの「防災鉄人リレー」を発案。電気を使わないで過ごしてみる、など楽しく防災にチャレンジする取り組みです。

 

 このグループは災害時に大事なのはやはり体力だと考え、体を鍛えながらできることとして現地まではリレーで訪れ、ゴールでは海の幸を食べたり、伊藤さんの防災教育のツアーを受けたりすることを提案しました。他のグループからは、「パソコンゲームやVRを通して、防災教育をきっかけに訪れる」「食べ物や日本酒など楽しみを感じつつ、その場でしか経験できない防災ツアーを組む」「映画やゲームなどの聖地化」といった案が発表されました。

 

 発表に対して伊藤さんは「防災意識が低い人に対して何ができるかを考えていかないといけない。防災教育だったら釜石だよねと思ってもらえるようにしたい」と意気込みを語りました。


テキスト:泉友果子