~ 大学生たちが南三陸町に通う理由。復興の先を見据えた関係人口の増やし方 ~
震災から8年が経ち、被災地の意識も、被災地を訪れる人々の意識もだんだんと変わってきています。数年前まではボランティアが中心となって訪れていた地に、今は地域の魅力を感じて訪れる人が増えています。東北でのスタディプログラムを実施している大正大学地域創生学部のプロジェクトプロデューサーである山中昌幸さん、宮城県本吉郡南三陸町の南三陸研修センターで活動する浅野拓也さんをお迎えし、スタディプログラムに参加した学生を交えて、地域のコアなファンである関係人口を増やす方法を考えました。
~ 「観光以上、移住未満」の関係人口をどのように増やすか ~
インプットトークでは、まず大正大学の山中さんが登壇。大正大学地域創生学部では、毎年2カ月間の現地スタディプログラムを行っています。現在大学に通う学生は、東日本大震災の当時は小中学生。災害といえば、2016年の熊本地震や2018年の西日本豪雨の印象のほうが強いのかもしれません。では、なぜ現在も南三陸町に通う学生がいるのでしょうか。それは、復興支援だけが目的でなく、現地の魅力を感じていることが大きいといいます。山中さんは、こうした「観光以上、移住未満」の関係人口をどのように増やすか話し合いたいと述べました。
~ ボランティアから観光・研修へ ~
2人目の登壇者は、宮城県本吉郡南三陸町の南三陸研修センターで活動する浅野さん。南三陸研修センターは研修プログラムのコーディネートに加え、大正大学が南三陸町に設立した宿を運営しています。以前は宿泊客の目的はボランティアが大半だったのが、2016年には数が逆転し、観光・研修を目的にする人の数が上回るようになったといいます。浅野さんも、現在は南三陸町にボランティアを呼ぶことは難しいが、地域に通い、交流する関係人口について考えることが大事だと話しました。
実際にスタディプログラムで南三陸町に滞在した学生も、自身の経験や南三陸町に深く関わるようになった理由を語りました。中には、卒業後に南三陸町で就職する学生も。
大正大学「サービスラーニング」南三陸での活動の様子(youtube)>>
~ 南三陸町に戻ってきたくなる仕掛け ~
ワークショップでは学生と社会人参加者がグループになり、「南三陸に関わり続けたくなる魅力体験プログラムを考える」をテーマに、「関わり続けたくなる仕掛け」と「地域の魅力を発信する方法」を話し合いました。
あるチームは「南三陸ワインプロジェクト」を発案。未成年である大学1~2年生がワインを仕込み、20歳になったときに南三陸町に戻ってきて開けるプロジェクトです。開けるときの様子をインスタグラムなどSNSでシェアすることも見据えました。ほかに「学生主導で地域ビジネスを行う」「バーチャル町民をつくる」「農業体験をすることで収穫に行かざるを得なくする」「花嫁・花婿修業として民泊し、料理を習う」といったアイデアが発表されました。
浅野さんは「発表されたアイデアを実行したい。南三陸町は何か手を挙げると後押ししてくれる人が多くいることが魅力」と、山中さんは「何度も行きたくなるような仕組みをつくっていきたい」とコメントしました。
登壇者や実際に現地で過ごした学生の話から、最初は「何か役に立てるように」という動機で訪れていても自分が得るものが多かったこと、そして地域と関わることが現地で暮らす人々に歓迎されている様子も伝わってきました。
テキスト:泉友果子