[vol.7] 生産者の「熱い思い」を広げるブランドづくり―地域で育む「みやぎ白石産ササニシキ復活プロジェクト」の展望

~ 食味日本一の栄光再び!白石産ササニシキの復活・ブランド化プロジェクト ~

 蔵王連峰の麓に位置する宮城県白石市は、地域有数の米どころとして知られる一方、福島第一原発から60〜70kmの距離ということから東日本大震災以降は風評被害に悩まされてきました。地域を代表する農産物といえば、かつて「食味日本一」と評されたササニシキ。しつこくない甘さと粘りの少ない米の粒感は寿司や和食との相性が抜群ですが、高齢化や国内需要の低下、そして育成の手間から「幻の米」になりつつあります。そこで有志の農家が中心となって、白石産のササニシキを復活させるプロジェクトが始動。白石産ササニシキのブランドをどうやって広めていくことができるか、その過程をストーリー仕立てで考えました。

 


~ 他にない香りと味で王座奪還へ、みやぎ白石産ササニシキ復活プロジェクト ~

 まずはインプットトークとして白石市役所職員、木須博之さんから「みやぎ白石産ササニシキ復活プロジェクト(以下、ササプロ)」発足までの経緯をお話しいただきました。高齢化による労働力不足や国内に置ける米需要の減少、それに白石では福島原発の影響も相まって耕作放棄地が増加しています。中でもササニシキは平成元年に食味日本一に輝いた実績があるものの、栽培管理の難しさから生産者が減少の一途をたどっていました。

 

 炊きあがりの香りの良さ、一粒一粒の米の立ち具合、他の食材の邪魔をしない上品な味わいは寿司をはじめ和食との相性も抜群です。一時はササニシキ王国とも呼ばれた宮城県、再びササニシキをブランドとして確立することが地域農業の生き残りの糸口になるとの考えから、地元農家の有志が集まってササプロが発足しました。

 

みやぎ白石産ササニシキ復活プロジェクト>>

 

 


~ 価値を丁寧に積み上げ、ファンを増やす白石産ササニシキ ~

 ではなぜササニシキ農家は減少してしまったのでしょうか?2人目のインプットトークとして白石市地域おこし協力隊の竹田祐博さんに解説していただきました。一時はコシヒカリと人気を二分したササニシキですが、今や全国の作付面積は1%を割っています。根が横に広がりやすく、また多収穫米で稲穂の重さで倒れやすいため、水や肥料のコントロールといった手入れが欠かせないのです。後発の人気品種、ひとめぼれに比べ多くの手間がかかっているにもかかわらず、農協での買取価格は大差なし。生活のためを思えば、ササニシキを手放すことも否定できません。

 

 兼業農家には作れない米、ササニシキ。4年前に始動したササプロでは、「専業農家だからこそ作れる米」ということを強みとするべく品質の向上に努めています。甘みの強い米がトレンドを占める中、平成28年度米食味分析鑑定コンクールでは白石産ササニシキが特別優秀賞を受賞。少しずつササニシキの価値が見直されています。加えて、地域おこし協力隊として大阪から移住した竹田さんは、今まで地元の人が取り組んでこなかったアクションを意識的に実施。都内の寿司組合で試食会を開いたり、仙台の百貨店で販売会を行ったりすることで、消費者層にも「白石産ササニシキ」のファンを着実に増やしています。

 

 今後は、約150年の歴史を誇る地元の酒蔵「蔵王酒造」と協働し、新しい酒造りの企画も考えているという竹田さん。「白石の米と蔵王の水で酒を造る、そんな原点に帰るようなことがしたい」と展望を語りました。

 


~ ブランド米として脚光を再び。ササニシキにかける思い ~

 続いて登壇した斎藤重雄さんはササプロ副代表として、生産者の立場からインタビュー形式でササニシキに対する思いを語りました。平成元年には食味日本一に選ばれたササニシキでしたが、その2、3年後に新種の「ひとめぼれ」が登場。平成5年に起きた冷害によって低温への弱さが露呈したササニシキは、一気にその座をひとめぼれに奪われてしまいました。その一方で、白石産のササニシキがおいしいことは誰よりも生産者がよく知っています。地域農業の陰りに打ち手を考えたとき、「各地でブランド米が出てくる中、我々にはコシヒカリと競い合ったササニシキがある。ササニシキをブランド米として打ち出そうと決めた」と斎藤さんは当時を振り返りました。

 

 とはいえ、やはりササニシキの栽培管理は手間が多く、すぐに誰もが手を出すというわけにはいかないのも事実です。「アミロースの含有量が多く糖の吸収が緩やかになるという現代人に合った特徴も打ち出しながら、高価格帯を狙っていきたい」と述べました。


~ 試食で実感、白石産ササニシキを広めたくなるストーリーづくり ~


 白石産ササニシキがブランド米の座を確立するためにはどんなアプローチが考えられるでしょうか?「おいしいお米と出会うジャーニー(体験の旅)を描こう」と題し、3〜4名のグループワークで施策案を考えました。今回のアウトプット方法は、なんと「寸劇」。白石産ササニシキを「食べたくなる」「食べ続けたくなる」「広めたくなる」ストーリーを2分間の寸劇にまとめてチームごとに発表しました。


 ワークにあたって、ササプロから白石産ササニシキを使った一口おにぎりと甘酒が提供されました。味にしつこさがなく、それでいて上品な甘みが感じられるササニシキは参加者にも大好評。味の違いを実感したことで、ワークにもより一層熱がこもります。


 最後はいよいよ各グループの発表です。あるチームは、糖の吸収が緩やかになるアミロース含有量の多さに着目。「特定保健用食品」として訴求し、健康を気遣う壮年層の食生活改善にアプローチするストーリーを提案しました。ほかにも「インバウンド観光客への訴求からSNSで拡散する」「カップ米として少量で販売展開する」「YouTuberに魅力を発信してもらう」といったアイデアが発表され、各グループとも個性的なパフォーマンスでイメージを共有しました。

 

  木須さんは「今日のアイデアから得られたヒントを今後の活動に活かしたい」と、竹田さんは「みなさんのコメントやアイデアはきっと農家の励みになります。頂いた声を白石に持ち帰ることで、地域がより元気になれば」と、また斎藤さんは「生産者としてこれからもうまい米を作っていきたい」とそれぞれササプロへの思いを新たにし、和やかな空気のまま幕を下ろしました。


テキスト:吉澤瑠美