[vol.9] 南三陸ホテル観洋「語り部バス」から考える震災の伝承 -震災から8年、震災の風化をどのように防ぐか-

~ 震災の歴史を後世に伝える「語り部バス」。震災のリアルとの向き合い方を探る~

 2011年3月に発生した東北大震災から早8年。年月を経て復興はある程度進められたものの、震災で壊滅的な被害を受けた宮城県・南三陸地方には大きな傷跡が残されており、その地で暮らす方々は今もなお震災被害とともにする生活を余儀なくされています。しかしながら、時の経過とともに世間においての震災の記憶が徐々に風化しつつあるのも事実です。今後も大きな震災が起こりうるとされる日本で生きていくうえで、過去に発生した震災の被害を知っておくことはとても重要です。

 

 今回はそんな震災の歴史を後世に伝えるための活動を行っている南三陸ホテル観洋から、「語り部バス」のガイドを務める伊藤 俊さんをお迎えし、語り部バスの活動内容について紹介いただいたのち、活動を続けていく中での課題や改善点について、参加者を交えながら話し合うワークショップが開催されました。


~ 震災の歴史をリアルに伝える「語り部バス」とは ~

 インプットトークでは、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた南三陸にあるホテル「南三陸ホテル観洋」より、第一営業次長 企画課長兼務の伊藤 俊さんが登壇。南三陸ホテル観洋は高台に位置していたこともあり、津波に流されることなく、震災時には被災者の受け入れや炊き出しなどを率先して行いました。現在はホテル営業の傍らで、震災の歴史を風化させないことを目的とした「語り部バス」を運行し、現地ガイドの案内とともに被災地をバスで巡ることによって、より震災のリアルを感じてもらう、という旨の活動内容を行っているとのこと。

 

 「震災はつらい思い出だが、そこにあった建物や風景、存在していた人や思い出を無かったことにしたくない」という想いのもと、語り部の一人としても活躍している伊藤さん。震災は過去の出来事ではあるものの、そこに訪れる新たな人との出会いから自分自身も新しく学べることがある。2019年9月で約38万人の方を乗せて案内している「語り部バス」は、近年のインバウンドの影響から、外国人の旅行者も増えてきており、「KATARIBE」という存在を世界にも広めたいという今後のビジョンなども語られました。

 


~ 震災のリアルをどのようにして後世に伝える?これからの課題点 ~

 続いてのテーブルダイアログでは、「震災の伝承・語り部の未来を考える」というテーマに沿って、【1】被災体験や防災の学びをより「リアルに」伝えるには?、【2】より「多く」の人に震災学習を体験してもらうには?という2つの課題について、各テーブルのグループにて行う約30分間のディスカッションタイムが設けられました。参加者の中には東北地方の出身者も多々見受けられ、参加者それぞれが震災時にどのような状況だったのか、どのような被害を受けたのかなどの実体験を交えながらの意見交換が行われました。

 

 発表タイムでは、「動画投稿サイトやSNSなどを活用し、若い世代にも震災を身近に感じてもらえるようなメディア発信の工夫をする」「VRやプロジェクションマッピングといった最新技術を導入することで、よりリアルに震災の被害を体感してもらう」「映画や小説、マンガといったコンテンツで震災や復興を取り上げることによって、一つの作品として後世に残す」といった意見も発表されました。


 参加者の中には教育現場や防災施設に勤める方なども。活発な意見交換が行われました。


~ 体験談として人に伝えていくことの重さと大切さ ~


 ディスカッションタイム中もテーブル間を行き来し、参加者の方の多様な意見に耳を傾けていた伊藤さん。公の場で震災についての経験や思いを話せる機会を設けるのは難しいと踏まえたうえで、「このようなワークショップで多くの人が集まり、それぞれが体験談や今後の課題について語り合う場に立ち会えたのが嬉しい」との感想を語りました。発表された意見を参考にし、伝え方にも工夫して被災地に興味を持ってもらうことで、南三陸に訪れる人が今後さらに増えてほしいと今後の展望を語り、会場は大盛況ののちイベント閉会を迎えました。



テキスト:竹島絵美子